アセントの誕生について
数週間前にお届けしたスプリット開発秘話のフォローアップとして、今回は最新のマップであるアセントを取り上げて、マップ開発の全体的なプロセスを詳しくご紹介します。ご想像のとおり、マップは初期アイデアの段階から進化して、皆さんがプレイできるようになるまで、長い制作期間を必要とします。アセントはVALORANTの開発初期から存在していたマップであり、現在皆さんがプレイしているゲームプレイの核となる部分を開発して、それを洗練させるためのたたき台となっていました。
それは長い道のりでした…
あらゆるマップ制作はインキュベーションと呼ばれる段階から始まります。この段階ではデザイナーがマップの企画案を練っていき、マップデザインの狙いや、作業の対象となる範囲の明確な制限、プレイヤーが楽しめるユニークなビジュアルを確立していきます。この企画案には上空から見下ろしたマップの図面や、また多くの場合は本作のゲームエンジンで体験可能なシンプルな3Dモデルも含まれています。
アセントはVALORANTのゲームプレイの基礎となるものだったので、このマップにおけるデザインの狙いはミッドのコントロールに重点を置いた、伝統的な3レーンのタクティカルなゲームプレイを確立させることにありました。また、操作可能なドアでプレイヤーがレーンの接続を変化させるようにしたいと考えました。つまりこのマップは、ここから発展させて将来リリースするマップの基準となるようにデザインされたのです。
チームで「これだ!」と思えるアイデアが固まると、マップ開発はグレーボックスの段階に移行します。この段階は数ヵ月で終わることもあれば、数年続く場合もあります。この段階において、本作のゲームエンジンで大まかな環境モデルをビルドし、核となるゲームプレイ要素のすべてと、新要素(操作可能なドアなど)のプロトタイプを組み込んで、時間をかけて何度もプレイします。
ここで重要なことは、素早く欠点を見つけて、一週間に何回も新たなバージョンのマップをプレイすることです。皆さんが実際に体験している射線や接敵距離、開口部の幅など、マップに関するあらゆる調整は、この段階で行われます。意図されたデザインの方向性に全員が納得し、そのマップでのゲームプレイに問題がないと確認されるまで、グレーボックスは終わりません。
アセントのマップ制作は、VALORANT自体の開発と同時進行で進みました。この間にアビリティーの影響力や各武器の射程に応じたパワー、さらにはIPの方向性自体も度々変更されたことから、アセントのグレーボックスは3年間も続きました。
この次の段階はブロックインと呼ばれ、ビジュアル面でのゲーム体験を決定づけるより詳細なコンセプト作りから始まります。この段階では、約2ヵ月かけてマップに関するあらゆる疑問に回答を見つけようとします。また、この段階が完了するまでにスムーズなゲームプレイを実現して、あらゆる構造物や遮へい物となるオブジェクトの見た目を確定させる必要があります。理想ではありますが、終了時点で残された作業はアート制作のみになります。
ブロックインの初期には、マップの全体的な構図にも注目して、プレイヤーが方向感覚を失わずにスムーズに移動できるかどうかも確認します。基本的には、「アートによってマップのゲームプレイを改善する」ことを考えます。たとえば、スパイク設置サイトやその周辺の主要なルートなど、ゲームプレイにおいて重要な部分をマップ内での構造上の階層を利用して強調する方法について考えます。
アセントでは、中世時代のイタリアの一部を地面から抜き取って空に向かって投げつけた、というアイデアからスタートしました。その後、ゲームプレイにおける要素が完成しているグレーボックスのレイアウトに、このビジュアルの方向性を統合可能かどうかを確認する必要がありました。
この段階で中央タワーのアイデアが誕生し、マップ内で最も高い地点であるサイトAをドームに覆われたバシリカで強調し、マップ内で最も低い地点であるサイトBを干上がった水路とボートハウスで強調するようになりました。
ブロックインのプロセスではアーティストとデザイナーがタッグを組みますが、アートプロダクションでの責任はマップ開発チームの優秀なアーティストたちが担うことになります。ここではブロックインで完成したコンセプトを使って、プレイヤーにとって記憶に残り、ゲームプレイもスムーズになるような環境上の体験を作り上げます。
この時、「マップ全体でクリーンなゲームプレイゾーンを維持する」というルールを守る必要があります。そのため、マップ内のアートに関連する主要なディテールは、高さ1フィート(約30cm)以下、あるいは9フィート(約2.7m)以上に配置します。この間のスペースは、私たちが「クリーンゾーン(Clean Zone)」と呼ぶものであり、簡略化され視認性に優れたエリアになります。ゲーム内ではプレイヤーが弾をターゲットに当てることが勝利の鍵となることから、エージェントのシルエット(特に頭部)が明確に視認できる必要があります。
この「クリーンゾーン」を除けば、アーティストは才能を発揮して自由にデザインを工夫することが可能です。アートプロダクションは最大で6ヵ月間続き、マップの各部分が活き活きと感じられるように、環境音の追加などの作業も行われます。
その他の全マップと同様に、私たちはアセントでも長い時間をかけて、プレイヤーがマップ内を移動する際に位置を把握する助けとなる像や壁画などの主要な注目地点(POI)を探りました。
これは「コートヤード」や「ガーデン」、「マーケット」などのコールアウトに使われています。
このプロセスは完了までに最大で1年かかることがありますが、アセントはゲームそのものと進化してきたため、5年近い歳月がかかりました。長い旅路ではあったものの、様々な点から言って、まだ始まったばかりです。パッチ1.02では、マップの射線の複雑さを低下させており、今後も皆さんの助けを借りてマップ改善を続けていきたいと考えています。
お読みくださりありがとうございました!今後もフィードバックをお寄せください。それでは、宙に浮かぶ島でお会いしましょう!