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パッチ4.04でのコントローラーエージェントの変更について

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皆さん、こんにちは。VALORANTでリードエージェントデザイナーを務めているJay Watfordです。今回、エージェントデザイナー数名を迎えてお話しするのは、パッチ4.04で行われたコントローラーのアップデートについてです。これらの変更に関して取られた細かなアプローチについて、エージェント(ブリムストーン、ヴァイパー、アストラ、オーメン)ごとに詳しく見ていきたいと思います。

私とKevin Meier、そしてAlexander Mistakidisの3人で、変更の背景を余すことなく解説していますので、ぜひ最後までお付き合いください。それでは始めましょう!

コントローラーというロール

話が理解しやすくなるよう、まずは開発内部で使われているコントローラーの分類について簡単にご紹介します。ブリムストーン、オーメン、そしてアストラは「ドームスモーカー」と呼ばれ、会話の中でもこの3人が一緒に出てくることが多いです。

一方、ヴァイパーは独自のカテゴリに分類されることが多いです。というのも、敵の射線を遮る上で彼女の主力となる「トキシックスクリーン」は、他のコントローラーのアビリティーと比べ、置き換えが難しいからです。ヴァイパーの変更は彼女独自の要素が強いので、下記の個別セクションで改めてお話しします。

ドームスモーカーについて変更を進める上で、私たちは二つの目標を立てました。目標の一つはデータを基に設定したもの、もう一つはデザイン哲学から設定したものです。

  • データ上、これらの3人は勝率とピック率の両方でかなり健全な値となっています。ですが高MMRになると話は別で、アストラのピック率がかなり高くなります。プロシーンにおいてアストラは圧倒的な牙城を築いており、どのマップでも他のドームスモーカーを締め出している状態にあります。そこで私たちは、ピックの幅をもっと広げ、連携プレイの多様性を充実させることで、チームごとに異なるプレイスタイルや手法を採用できるようにしたいと考えました。この考えは、私たちのデザイン哲学に繋がってきます。
  • エージェントをデザインする際に私たちが指針とする哲学の一つとして、「エージェントを尖らせる」ことが挙げられます。つまり、各エージェントに明確な長所と短所を持たせ、それぞれが独自の戦略を生み出せるようにするのです。これに関して、ドームスモーカーはかなり難航している印象でした。オーメンとブリムストーンはその強みがハッキリとせず、彼らの得意とすることは、どれもアストラで代替可能となっているように感じました。そのためパッチ4.04では、エージェントごとに特化したプレイパターンを設け、それらを尖らせることを目指しました。こうすることで、ピックする/ピックしない理由をエージェントごとにしっかりと設けられるはずです。


ここからは、上記の視点を基に各コントローラーについて見ていきましょう。

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ブリムストーン

我らが老犬ブリムストーンに関しては、コントローラーの中でしっかりとした個性を確立するだけでなく、彼の弱みである「スモークの射程と弾数の制限」に対して、もっと明確な強みを持たせたいと考えました。ここでの狙いは、使い勝手を向上させると共に、プレイスタイルをより際立たせて、味方との連携の場面でブリムストーンがその役目を果たしやすくすることでした。ブリムストーンの個性として、私たちは「迅速なプレイングで敵に奇襲をかけたいプレイヤーに有用なコントローラー」とすることを目標としています。

今回のスモークアビリティーの改善によって、ドームスモークの展開という点で、コントローラー内でのブリムストーンの有用性が高まるはずです。これを「スティムビーコン」の変更(ラピッドファイアと共に、少量のスピードブーストを付与するように)と組み合わせることで、味方に突撃のタイミングを明確に伝えられるようにしました。「スティムビーコン」は用途が限定的でしたが、今回の変更でそれが改善され、ブリムストーンの強みをどのラウンドでも発揮できるようになるでしょう。彼の膝が悲鳴を上げることになるかもしれませんが!

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オーメン

コントローラーの戦略的な多様性はこの1年で発展を遂げてきましたが、オーメンは影の中に隠れてしまっていました。ですが、私たちにはその姿は見えていました!オーメンについては、他のコントローラーにない明確な得意分野を作りだし、強みをもっと強調したいと考えています。その一方で、一緒にプレイする味方がわずらわしさを感じる弱みについては、もっと抑えていこうと思っています。

他のコントローラーのドームスモークと比較した際、「瞬間的な突破力に欠けている」、また「複数の射線を即座にブロックできない」ことが、オーメンの足を引っ張っているのは明白です。これについてはゲームプレイ上の健全な弱点だと考えていますが、その点があまりに強調されすぎているせいで、味方としてはプレイに活かしづらい状態となっています。オーメンのスモークは目的地まで飛んでいき、それが展開されるまで待たなくてはならないため、複数のスモークを設置する際に他のコントローラーと比べてかなりの時間を要します。

そこで、飛翔速度の増加とクールダウンの短縮をセットで行い、ドームスモークを高頻度で利用できるコントローラーとして、オーメンを尖らせることにしました。アストラとブリムストーンの強みである瞬間的な突破力を持っていない代わりに、ラウンド全体で敵にプレッシャーを与えたり、別方向へ注意を引き付けたりできるようになっています。

スモーク以外のアビリティーについては、他のコントローラーよりも戦闘を重視した性能となっています。この強みを強調し、いくつか使い勝手の調整を加えることも、十分理に適っているでしょう。「パラノイア」の出現位置を前方にずらしたので、隣接する味方の視界を奪ってしまうことが減るはずです。また、「シュラウドステップ」については発動タイミングを早め、他エージェントが持つ同等の移動アビリティーと、より一致するようにしました。

オーメンをジェットのように動き回るエージェントにするつもりはありませんが、これらの変更によって、以前よりも敵から捉えられ難くなるでしょう。

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アストラ

お次は、コントローラー界で圧倒的な存在感を放つエージェント、アストラについてです。アストラは豊富で柔軟性の高いユーティリティー(設置物)を備えており、プレイヤーはアストラを使いこなせるようになると、他のコントローラーをピックしなくなっていました。その多様性のおかげでアストラはユーティリティーの特性を存分に発揮することができ、射程に制限がないことがその強みに拍車をかけていました。

マップのどこにでもユーティリティーを配置できる能力は、コントローラーとしてのアストラの重要な個性です。ですが、その強みを相殺する想定で設定した弱点のほとんどが、機能していない状態にありました。戦略的なスターの配置とユーティリティーの利用で敵の一歩先を行くのではなく、むしろその豊富さを活かしてマップのあらゆる場所にスターを設置し、短いクールダウンで判断ミスを補うようになっていたのです。

他のドームスモーカーが活躍できる余地を作れるよう、アストラにはある程度場所を空けてもらう必要があります。

明確な弱点作りをする上で中心となったのが、スターの削減です。今回、最大チャージ数を5つから4つに減らしました。この変更によって、単に展開できるユーティリティーの最大数が減るだけでなく、明確かつ重要な判断ポイントが生まれると考えています。スターを4つとも使い切ってしまえば、アストラは完全にガス欠状態となり、スパイク設置後に使えるスターが無くなります。また、すべてのチョークポイントにスターを事前に設置して活用するということも、ほとんどのマップでできなくなります。また、敵を撹乱しようとしても、クールダウンが長くなったことで、本当の攻撃ポイントへの対応が遅れることになるでしょう。

クールダウンの全体的な延長は、各ユーティリティーに対する判断の重要性を高めると共に、相手にもっと明確なチャンスを生み出してくれるはずです。アストラの特徴であるマップ全域への影響力は残しつつ、これらの弱体化によって、他のコントローラーの強みをしっかり定義できればと考えています。

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ヴァイパー

他のコントローラーに行ったアップデートは相互に関係し合うものですが、ヴァイパーの変更については、もっと独立した内容となっています(馴れ合いを嫌うヴァイパーらしいですね)。

ヴァイパーは「トキシックスクリーン」と「ポイズンクラウド」のおかげで、コントローラーとセンチネルの両方を兼ねること可能でした。それ自体はよいのですが、これまでに行った強化や、開けた空間が多いマップの登場が原因で、あらゆる場面で必須のコントローラーかつ最有力のセンチネルとなってしまったのです。二つのロールをこなせる強みとバランスを取るためには、より一つの領域に特化したエージェントと比較した際、明確に弱点となる部分を設ける必要があると考えました。パッチ4.04における主な目標は、ヴァイパーのセンチネルとしての性能を抑えることです。ただし、一部の変更は攻撃性能を抑えるためのものでもあります。

「スネークバイト」の持続時間の短縮、スモークのクールダウンの延長、またスモークのクールダウン状態を示すビジュアルの追加によって、攻め込む際に活用できる時間的余裕が両チームにもっと生まれてくれればと思っています。これらの猶予が両サイドで十分プレイに活用できる状態となっているかは、今後も監視を続けていくつもりです。

スモークについてもう少しお話しすると、KAY/Oの「ゼロ/ポイント」を活用したチャンス作りは見ていて楽しいのですが、ヴァイパーが抑制状態になってからスモークが消えるまでのディレイは、KAY/Oのチームにとってわずらわしいもので、仕掛けるタイミングを測りにくくなっていました。このディレイが削除されたことで明確性が高まり、KAY/Oの抑制効果の狙いである、「対妨害性能」を発揮しやすくなるのではないかと思います。

また、「トキシックスクリーン」と「ポイズンクラウド」を両方発動している際の毒のリソース消費量が増加しました。相手チームにとっては同時に複数のエリアにプレッシャーをかける連携プレイの有用性が高まり、ヴァイパーにとっては両方のスモークを使って狭いエリア(例:バインドのBウィンドウ)を覆いつくす作戦は取りづらくなるはずです。この変更の基本的な狙いはリソース管理の重要性を高めることですが、“サビーン”使いのプレイヤーには、彼女の好みそうなこと──「熟達度の高さを見せつける」という別の楽しみを与えてくれるでしょう。

今後について

コントローラーに行ったこれらの変更によってピックの幅が広がり、VALORANT全体がプラスの方向に進んでくれれば嬉しい限りです。とはいえ、これから先もまだまだバランス調整の仕事は続いていきます。ライブ環境で変更の影響を監視し、皆さんのフィードバックを取り入れながら今後の調整について考えていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。そして、他プレイヤーがデュエリストを即ピックする中でも、チームのためにスモークを焚き続けるコントローラーメインの皆さんに大きな感謝を捧げます!

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