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スプラインを開発したアーティスト、エンジニア、テクノロジー

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こんにちは。VALORANTのコンテンツサポートチームでソフトウェアエンジニアを務めるBrandon Wangです。今日はウェポンアーティストのChris Stoneと一緒に、先日リリースされた武器スキン「スプライン」の開発に注目し、エンジニアとアーティストがどのように協力して皆さんの記憶に残るコンテンツをお届けしたのかについてご説明します。

スプラインは異なる手法を試す挑戦でした。エルダーフレイムやプライムのような存在感のあるスキンもすでにありましたが、独特な形状で初期レベルからカラーバリエーションにアクセス可能なスキンシリーズはこれが初めてでした。コンテンツサポートチームがコンセプトアートをプレイヤーに見せてみたところ、幸いにも彼らに気に入ってもらえました。FPSデザインには珍しい、抽象的で不思議な形が良かったのかもしれません。こちらをご覧ください。

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オーブに命を吹き込む作業はそれ自体が困難な作業でした。なぜなら、私たちが求めるものはビジュアルエフェクトだけでは実現できなかったからです。オーブが光を放射するだけでは、独特の雰囲気を上手く表現できませんでした。

そこでコンテンツサポートチームとプレミアムコンテンツチームの美しいパートナーシップの出番となりました。エンジニアリングチームの助けを借りてアーティストがシェーダー機能を使った試行錯誤を繰り返したことで、スプラインのオーブに使用するシェーダーが開発されたのです。この際、スプライン用以外のシェーダーもいくつか誕生し、それらは今も実際にゲーム内で使われています。

アートとエンジニアリングが出会うとき

VALORANTの開発初期には、私(Brandon)の作業の大半はシェーダー(多くの人がゲームのグラフィックだと考えるものの背後にあるプログラム(リンク先は英語ページ))を最適化して、アートスタイルを後押しするための基礎的な作業でした。

アートスタイルが確立されて、GPU的に満足のいくパフォーマンスが出せるようになると、私は自分の専門分野であるレンダリングとマテリアルのエンジニアリングの知識を活かして、他のチームの特殊なニーズの手助けを行うようになりました。

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私が開発に参加したもののひとつにセージのオーブがあります。セージには宝石のようなパワーの源を持たせたかったので、パララックス(視差)を使って、オーブの内部に雲が浮いて流れているように見える試作品をビルドしました。

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(左:初期の試作品、右:完成版)

試作品と関連データをビジュアルエフェクトのアーティストに渡すと、彼らが見た目を調整して独自の効果を付与し、現在の完成版が出来上がりました。

武器スキンに関しては、少し変わった試みを行いました。プリズム、アバランチ、ネビュラは元々はどれもベースモデルの武器の実験や試作品であり、セージのオーブと同様に、ユニークなエフェクトを使って面白いスキンを作れないか試すためのものでした。

しかし、面白いエフェクトを作り出すだけでは十分ではありません。それをアーティストが手軽に“調整できる”ようにビルドする必要があります。プリズムでは、エフェクトと色を調整するためにグラデーションを利用しました。

アバランチは様々な異なるエフェクトをごちゃまぜにしてピンクのヒマラヤ岩塩を作る試みとして始まりました(インスピレーションを与えてくれたVALORANTのPRマネージャーに感謝)。これはあまりいい感じの仕上がりにはなりませんでしたが、アーティストが青いバージョンを見たときにスキンの方向性が決まり、現在のものへと変化しました。

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[Original Avalanche prototypes]

Avalanche_Asset.jpg

ネビュラは“別世界への入り口”というシンプルなアイデアで始まりましたが、テクスチャを制限内に抑える(たとえ凝ったスキンを使ってもゲームのパフォーマンスが重くならないようにする)には、エンジニアリング側で多くの作業が必要でした。

そこで、キューブマップの一面を水平方向にシームレスに貼り付け、その上に“ディテール用”テクスチャを追加してみたのですが、残念ながらこのバージョンでは一部のプレイヤーが画面酔いを感じてしまったため、キーボードを汚さないために新たな対策を考えることとなりました。そこでアーティストたちは、ネビュラらしさをさらに追及しつつ酔いを避けられるようにエフェクトを削減しました。

early_nebula.jpg

エンジニアリング段階で生まれる試作品は完成版には似ても似つかないもので、あくまでもアーティストの製作作業で利用するツールにしかなりません。プリズム、アバランチ、ネビュラはその技術自体が各スキンシリーズの中心となり、スプラインはセージのオーブで使われた技術を組み合わせて完成しました。セージのオーブと言えば、私が覚えているのは──あ、ちょっと、キーボードを取らないで。これは僕が自分で組み上げたお気に入りの──

──エンジニアリングがアートに出会うとき

ここからはChrisがお届けします。このキーボード、いい感じですね。この打鍵感……たまりません。

さて、前述したセージのシェーダーは疑いようもなく素晴らしいものです。しかし、スプラインに関してはオリジナルのコンセプトにあったオーブの独特な雰囲気を表現できていませんでした。そこで私はBwang(Brandonのこと)にセージのシェーダーについて詳しく聞くことにしたのです。まずはゲームエンジン内にシェーダーネットワークがどのようにセットアップされているのかについて教えてもらい、その知識を基にアーティスト側で細かな調整をいくつか行うことで、目標に一歩近づくことができました。

その後はSubstance Designer(ノードベースのテクスチャリングソフトウェア)を使って、ゲームが重くならないようにパフォーマンスとのバランスを取りながら、コンセプトアートのスタイルにより近いテクスチャを新たに作成しました。

以下は新たなテクスチャを作成する過程の一部です。この過程が終了する頃には、セージのオーブよりも抽象的で、スプラインのコンセプトに合ったものが完成していました。

cstone_spline_sagecompare_02.gif

ここでおまけとして、コンテンツサポートチームとのコラボレーションで生まれたカスタムシェーダーもご紹介しておきましょう。このシェーダーはプリズムスキンシリーズで利用されています。Bwangに教えを請い、オーブのエフェクトを玉虫色に調節できるカスタムコントロールを開発したものです。

ご覧ください。

Prism_Asset.jpg

さらなるコラボに乞うご期待

というわけで、プレミアムコンテンツチームとコンテンツサポートチームが密接に協力し、新たなシェーダーを開発したことで、一味違ったスキンが誕生したのでした。しかし、これはほんの一例に過ぎません。

Spline_Collection.jpg

あらゆるスキンシリーズでこのような作業が行われるわけではなく、私たちは日々それぞれの担当作業も行っていますが、プレイヤーの皆さんのためにあれこれ試してみるのはいつだって楽しいものです。チームの垣根を越えた共同作業を行うことで、素敵ななにかを作り出せるのだということを理解してもらえたなら幸いです。

共同作業をする際に大事なのは、どうやったらプレイヤーの皆さんを楽しませることができるかを考えること。そうすれば、自然と同じ目標へ向かうことができます。私たちは常にアーティストとエンジニアが密接に協力するように心掛けており、今後も新たなワークフローを確立していくつもりです!

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