VALORANTにおける武器スキンの制作とファンタジーの実現

プレミアムコンテンツチームのメンバーが、VALORANTにおける武器スキンのファンタジーに命を吹き込む過程についてお話しします。

皆さん、こんにちは!プロデューサーのPreeti Khanolkarです。今回はVALORANTのコンペティティブ インテグリティ(競技の公正さ)を破綻させない範囲で、武器スキンのファンタジーを実現する方法について説明します。私はSean Marino(アートリード)と一緒にプレミアムコンテンツチームを率いており、武器スキンやガンバディー、スプレーなどのゲーム内に登場するカスタマイズアイテムを担当しています。今回は武器スキンについてお話ししたいと思います!

先週、Marinoが「あらゆる状況でゲームプレイ優先のアプローチを行う」という、武器開発の基本方針を説明していました。この基本方針はヴァンダルが炎のマグマを吐いたり、SFみたいなエネルギーを発射したとしても変わりません。スキン開発の目標はあくまで、「他のプレイヤーのゲームプレイ体験を損なわない範囲で」プレイヤーに個性を発揮できる方法を提供することです。

今回はスキン制作の舞台裏をご紹介し、単に自己表現をするだけではなく、プレイヤーがそのファンタジー世界に没入できるスキンをデザインするために私たちが取っている手法についてお話しします。スキンのファンタジーにもっと深く浸りたいという方は、一部のスキンにはきっと皆さんの琴線に触れるようなカスタムアニメーション、エフェクト、オーディオなどが追加されるアップグレードが用意されていますので、ご自身にピッタリくるものをお使いください。

スキン開発のルール

  • スキンのモデル、アート、ビジュアルエフェクト、アニメーション、サウンドは、一人称視点のみで十分な没入感を得られること
  • 別のプレイヤーの視点(三人称視点)からはスキンのモデルのみが見えること
  • Pay to Win(課金者有利)にも、Pay to Lose(課金者不利)にもしないこと。これだけは絶対に守ります。
  • これらのルールに違反するスキンがあれば、それは意図したものになっていないということなので、修正します!恐れ入りますが、チームメンバーの全員がロボットというわけではありませんので、ヒューマンエラーについてはどうぞご理解ください。

インクの最初の一滴

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お気に入りの武器の見た目を変えられるだけでも素敵ですが、それだけではなく、別世界のファンタジーを感じてもらうためには何をすればいいでしょう?そして、それはどこまでが許されるのでしょうか?ここまでは?OK!じゃあ、ここまでは?いや、それはダメ。このようにして、私たちは常にバランスが失われない範囲を模索しています。

ただし、スキンのアイデアを推し進める前に、「それをVALORANTの中でどうやって実現するのか」、そして「それはプレイヤーが求めているものなのか」ということについて私たちは考えます。

それは誰のためのものなのか?私たちは、スキンを私たち自身ではなく、プレイヤーの皆さんのために作ります!だからこそ、リサーチチームはプレイヤーからの大量のアンケート結果、そしてラボで得られたフィードバックを綿密に精査し、プレイヤーがVALORANTに求めているテーマを探ります。たとえば、王道のSFやハイファンタジー、クールでモダンなデザイン、または全く抽象的なものなどの中から、どの方向性を選ぶべきかを考えます。

PC_Brainstorming


その後にアイデアです。思いつきで描かれたアートや、コンセプトアーティストの手による走り書きのスケッチからアイデアが生まれることもあれば、自分が元々好きだった何かから着想を得ることもあります。ホワイトボードが130枚を越える付箋で覆われているのは、どんなアイデアでも可能性を秘めているからです。ブレインストーミングの初期段階において、その場で思いついたひらめきが話題に上がれば、必ず「なるほど、それで?」と問いかけます(決して「ダメだ。なぜなら~」とは言いません)。とはいえ、“オールイン”される銃と、そうでない銃を見極める根拠は何なのでしょうか?

それは、5つの問いかけです。チーム内でそのアイデアに賛成するメンバーと、それに反対するメンバーの両方をそれぞれ数人ずつ集めて、コンセプトを考案する作業を始めます。ここで想像の世界と理想的なファンタジーをもとにしたイメージを具体化させます。最初に以下のような問いかけに答えていくと、アイデアを深めるのに役立つと分かりました。

  • それを言い表す形容詞は?
  • それにはどんなテーマソングが合う?
  • その世界観をひとつの基調となるアートで表現できるか?
  • その別次元の世界では、どんな人がその武器を使っているのか
  • その武器はどんな素材で造られているのか?
  • その武器を使ったとき、プレイヤーにどう感じて欲しいのか?その武器の雰囲気は?
  • プレイヤーがそのスキンを初めて見たときに「おおっ!」と思う瞬間はどんなものか?

これらに答えられなければ、私たちはいつまでも「これは岩か?エイリアンか?未来のテクノロジーか?それともエイリアンが岩から造った未来のテクノロジーなのか?」と考えながら堂々巡りすることになります。自分たちが何を作ろうとしているのか分からないままに、そのスキンシリーズを作り始めたいとは思いません。だからこそ、これらの質問に答えることでチームの考えをまとめて、体験全体の一貫性が維持されるようにビジョンを統一します。

つまり、こうすることでより良いスキンが作れるようになります。

チームに渡して作業開始

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コンセプトとモデル

まず最初に、才能あるコンセプトアーティストたちが、チームが用意した抽象的な(ときにはクレイジーな)アイデアと参照資料を利用して、スキンの最初のコンセプトを作成します。何度かやり直したあとに、スキンシリーズの最終的なコンセプトが出来上がります。

コンセプトが完成したらモデリングのプロセスを本格的に開始しますが、その前に、それが理想的なファンタジーを実現していて、実際に作成可能であり、かつゲームプレイ上の厳密な制限を満たしているかどうかを確認します。たとえば、そのスキンのモデルがベース武器の一人称視点と三人称視点の両方のシルエットと一致していて、地面に落ちていても認識可能であるかどうかなどです。

アニメーション

スキンを適用した武器のアニメーションは、ベース武器の印象を維持する必要があります。スキンを適用したことで、それが別の武器のように感じられてはいけません。学び新たなスキンを使うことで、その武器を学び直す必要があってはならないのです。つまり、射撃の感覚は同じであるべきで、遅く感じることがあってはいけません(“早く感じる”のは構いませんが、“実際に早く”なってはいけません)。また、画面内で武器が占める範囲に増減があってもいけないのです。

ごく稀に、そのファンタジーを実現するためにどうしても必要であれば、これらのルールを破って例外を適用する場合もあります(いずれ何のことだかお分かりいただけるでしょう!)。たとえば、装備アニメーションでスキンの画面占有率がほんの少しだけ大きくなってしまうことがあるかもしれません。ただし、これは何度も議論を重ね、何度もテストや試行錯誤を行い、デザインに明確な承認が得られなければ行いません。また、決してPay to Winにはしません。

視覚効果

VALORANTでプレイヤーが集中すべきはキルを奪うこと、スパイクの設置または解除、そしてスタイリッシュに勝利をつかむことです。これが武器スキンで変わってしまってはいけません(ラウンド開始前にボタン連打で遊んだり、スキンによる変化を眺めるのは例外かもしれませんが)。そのため、武器スキンに関連した視覚効果はかっこいい見た目ではあるべきですが、決して気が散るようものではいけません。

基本となるマズルフラッシュの形や大きさに変化がなく、弾丸の軌跡は発射した人の一人称視点でしか見えないようになっていて、ADS時の照準は明確で容易に視認できる必要があります。

効果音

オーディオはスキンのファンタジーを表現するうえでとても重要な要素ですが、VALORANTのゲームプレイにおいても極めて重要な要素となっています。スキンによって大事な音が聞こえなかったせいで、ラウンドの重要な場面を逃してしまうようなことがあってはいけません。

そのため、スキンに新たな効果音を用いる場合は、ベース武器の効果音よりも音が大きかったり小さかったりすることがないようにしつつ、それでも違いが分かるようにします。連射時の集弾率を効果音で判断してコントロールしているなら、新しい発砲音がそれに影響を与えてしまってはいけません。

銃の弾薬をリロードするときなど、アニメーション内でゲームプレイに関連する部分には必ず音を組み合わせるようにしています。これらのアニメーションで音が再生される、また音が消えるタイミングをできる限り同じにするように努めています。

ベース武器では静かな部分に音を追加する場合は、それでプレイヤーを楽しませることができて、スキンのテーマを上手く表現できるものにします。ただし、このような純粋に装飾でしかない効果音に関しては、プレイヤーの周囲でゲームプレイ上もっと重要な効果音が鳴っている場合、ボリュームが低下するようにしています。

具体的に説明しますね。たとえば、あなたがヘイヴンのAサイトにあるトラックの後ろに隠れていたとします。ヴァンダル(リーヴァー)をリロードしたいものの、「スポーン地点からスパイク解除のために近づいてくる敵のソーヴァの足音が、リロード音にかき消されるのでは?」と不安になるかもしれません。ご心配なく!ゲームプレイにおいて重要となる効果音は常に優先されるので、安心してヴァンダル(リーヴァー)をリロードしてください。

デザインのプレイテスト

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私たちは文字通り、あらゆるものをテストします。デザインプレイテスト(DPT)チームが1日に2回プレイテストを行い、その中でデザイナーたちがマップやキャラクター、そしてスキンなどのあらゆる新要素を実験していきます。

ここでスキンのファンタジーが想定通りに実現されているかどうかや、ゲームプレイの制限が守られているかどうかが、厳しい目でもう一度チェックされます。あらゆるスキンでフィードバックを集め、コンペティティブ インテグリティーが損なわれないようにしながら、ファンタジーの表現を洗練させます。DPTチームは私たちの中で最も厳しい批評家ですが、だからこそ頼りになるのです。実際にスキン改善の役に立ったフィードバックには、以下のようなものがあります。

  • 「これはとても気が散るので、ゲーム内でファントムを一切買いたくなくなる」
  • 「走っているアニメーションの速さや滑らかさ、反応性が、ベースの近接武器を持って走っているときと同じだと感じられない」
  • 「クラシックらしさを感じられない。実際に与えられるダメージ量が、効果音や視覚効果から得られる印象と一致しない。かっこいいけど、ゲームプレイに少し悪影響がある。また、モデルがかなり大きい」

DPTのテストとは別に、私たちの目指すスキンテーマが大好きな“エキスパート コンサルタント”をVALORANT開発チーム内で探してきて、彼らにも話を聞きます。たとえば、ハイファンタジーをテーマにしたスキンを制作しているなら、「このスキンを気に入るであろう」チームきってのファンタジーオタクな人に認めてもらえるスキンにします。もし彼らが「気に入らない」と言ったり、「改善した方がいい」と言えば、さらに詳しく話を聞きます。

私たちは上手くやれていますか?

最終的にスキン制作が成功したかどうかは、皆さんの意見を聞いたときに判明します。VALORANTはまだクローズドベータ中ですが、グローバルに正式リリースが行われるようになれば、さらに多くのことを学べるでしょう。

それまでの間は、Sal Garozzo(Volcano)が午後9時に突然私たちのところにやってきて、その日の夜にDPTでテストした彼好みの焼け付くような近接武器について「最高に気に入った」と伝えてくれることを望むばかりです。

Salが気に入るものならば、きっと大丈夫だと思います。