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VALORANT 連載「システムの健全性」 - マップの多様性

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編集者より:この記事はVALORANTのゲームシステム上の様々なトピック、特にコンペティティブとソーシャル&プレイヤーダイナミクスの領域での問題を深く掘り下げていく連載企画の一部となっています。連載の趣旨については「はじめに」をご一読ください。また「AFK」や「悪質なチャット(テキスト&ボイス)」についての記事もお読みください。

皆さん、こんにちは。VALORANTコンペティティブチームのBrian Changです。今回は、「ゲームの健全性」に関するこれまでの記事とは少し方向性を変えて、「マップのランダム性」という具体的なトピックを掘り下げていきます。

4試合連続でマップが「アイスボックス」なんてあり得なくない?…そんな疑問を持ったことのある方は、ぜひお読みください!

これまで多くの方が感じていたのが、数試合続けて同じマップに当たったときのフラストレーションです。最近実施したアンケートでは、VALORANTプレイヤーの3分の1以上が、何回も連続で同じマップになることに対して「とてもフラストレーションを感じる」と回答していました。

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参照データ: 2022年3月実施NAプレイヤー向けアンケート

私たちもその通りだと思います。同じマップでのプレイが続くと飽きてしまうし、ゲーム内で遭遇するチャレンジの種類も限られてしまいます。ですからマッチメイキングの健全性(対戦待ち時間やマッチバランスなど)を損なうことなく、試合に用いられるマップの多様性を向上させたいと考えました。

私たちがどのような変更を施し、その結果がどうであったのか、まずは過去のシステムを見ていきましょう。

リリース(2020年6月)~パッチ1.08(2020年9月)

ゲームリリース当初のマップ選択は、純粋にランダム化されたものでした。10人のプレイヤーが試合に臨む際、マッチメーカーは使用可能なマップ(当時は4種類)のいずれかをランダムに選んでいました。どのマップも選択される可能性は等しく25%で、プレイヤーがそのマップを最近プレイしたかどうかは考慮されませんでした。

選べるマップが4つしかないため、当然ながら、同じマップを続けてプレイすることも少なからずありました。この時期の同一マップ出現率は次の通りです。

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26%のプレイヤーが5試合中3試合以上で同じマップをプレイ

この時期に5試合プレイすると、26%の確率で同じマップに3回当たることになり、特に運の悪い(あるいは良い?)1%のプレイヤーは、5回連続で同じマップに当たっていました。

パッチ1.08(2020年9月)~パッチ4.04(2022年3月)

私たちはすぐに「完全ランダム制」は理想的ではないと悟りました。どれだけ「アセント」が好きでも、5試合連続でプレイするとなれば飽きてしまいます。これに対処するために導入したのが、なるべくプレイヤーが最近プレイしていないマップを選択する「疑似ランダム」システムです。

この手法では、試合に参加する10人のプレイヤーがあまりプレイしていないマップを総合的に判断し、それを優先します。また、いずれかのプレイヤーが最近連続してプレイしたマップがあれば、それを極力排除します。

要するに、連続プレイの回数を抑える一方で、選択そのものは補正を加えた「ランダム制」のままだったということです。これにより、同一マップをプレイする確率は下がったものの、運悪く同一マップで連戦する可能性は引き続き残っていました。例えば、最近「スプリット」でプレイしたプレイヤーが数名参加する試合があったとします。これにより、「スプリット」がマップに選ばれる可能性はわずか5%となります。しかしながら、5%の確率といえど、4回あるいは5回以上連続で「スプリット」に当たるプレイヤーが出てきてしまいます。

結果として、同一マップ出現率は以下のようになりました。

MapDiversity_Chart_3_v02_JA.jpg

ご覧の通り、同一マップを3回以上経験するプレイヤーの数は劇的に下がりました(「完全ランダム制」では26%、「疑似ランダム制」では10%)。

また、新マップが追加されたことで、プレイヤーが同じマップを連続してプレイするケースは大幅に減少しました。マップ追加による同一マップ出現率の変化は以下の通りです(マップ選択手法への大きな変更なし)。

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マップを追加したことで同一マップの出現は減少

プレイ可能なマップの数を増やすだけで、マップ選択手法に変更を加えずとも、同じマップが3回連続で出現する確率が10%から3%に減少したのです!

パッチ4.04(2022年3月)~現在

これまでの変更によって大幅な改善がみられ、しばらくの間はこれで十分だろうと思われました。しかし皆さんのフィードバックから、まだやるべきことがあると教えられました。

今年3月に北アメリカのプレイヤーを対象として実施したアンケートでは、67%のプレイヤーが、何度も続けて同じマップに当たることが「頻繁」または「かなり頻繁」にあると回答したのです。

MapDiversity_Chart_5_v02_JA.jpg
参照データ: 2022年3月実施NAプレイヤー向けアンケート

これは看過できない結果です。テレメトリを見る限りでは改善されていたものの、プレイヤーには「相変わらず同一マップに当たる」という感覚があったのです。アンケートだけでなく、RedditやTwitterでも毎週のように「なんで3回連続アイスボックスなんだ?」という話題が持ち上がっていました。

そこで私たちは今一度、システムの改善点を考えることにしたのです。プレイヤーの皆さんが望んでいるのは、より「ランダム化」されたマップ選択ではなく、より多様性のあるマップ体験であることが分かりました。以前のシステムのようなランダム化されたマップ選択では、プレイヤーが経験していた「不運」を完全に抑え込むことはできません。

そこで、ランダム化によるマップ選択の代わりに、同一マップの出現を最小限にする確定的な選択手法を開発することにしました。この手法では、特定のマップが頻繁に出現している場合、そのマップをプールから完全に除外します。その後、ロビーにいる10人のプレイヤーが最も当たる機会の少ないマップが選択されます。

この変更はパッチ4.04でラテンアメリカ地域を対象に試験運用され、その後世界規模で実装されました。実装にあたっては、この変更が対戦待ち時間の延長やマッチバランスの改悪につながらないよう注意しました。いずれかの指標に悪影響が出てしまうと、変更による改善を大幅に超えるマイナスとなってしまうからです。

最新の変更により、同一マップの出現率は以下のようになりました。

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4月の第1週に、コンペティティブキューで同じマップに5回連続で当たったプレイヤーはいませんでした

これまでで最も大きな改善です!同じマップに3回連続で当たるプレイヤーの割合は0.06%にまで低下しました。これは約1700人に1人の割合です。さらに言うと、この週のコンペティティブキューで同じマップを4回連続でプレイしたのは、数百万人いるプレイヤーのうち8だけでした。ちなみにその8人のうち2人は、特定のマップに当たると徹底的に対戦回避をするプレイヤーでした(残る6人に対しては、とてつもない不運に見舞われたことをお詫びせずにはいられません)。同じマップに5回以上連続で当たったプレイヤーは皆無です。しかも対戦待ち時間や試合のバランスへの悪影響はまったくありませんでした。

マップの連続出現率の他にも、連続ではなくても同じマップが出現する頻度や、各マップを少なくとも1回プレイするまでにかかった時間なども追跡調査しました。どちらもパッチ4.04の変更によって、大幅な改善がみられました。

今後について

最新のAsk VALORANTでも触れましたが、意図的なマップ選択が妥当なケースもあります。今後予定しているトーナメントモードのような、連携性や競技性の高いチーム戦では特にそうでしょう。

現時点では、確定的マップ選択によって、マップの多様性に関するフラストレーションはかなり緩和されたと感じています。最新のアンケートでも、この変更以降プレイヤーの印象が改善したことが示されています。引き続きデータを注視し、更なる変更が必要かどうかを検討していきますが、今のところ経過は良好です!

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