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VALORANT 連載「システムの健全性」 - スマーフ検知

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この記事はVALORANTのコンペティティブとソーシャル&プレイヤーダイナミクスの領域での問題を深く掘り下げていく連載企画の一部となっています。連載の趣旨についてはこちらをご一読ください。

こんにちは、Brian Changです。連載「システムの健全性」の最新記事をお届けします。前回の記事は今年の2月でしたので、久しぶりの情報共有です。お待ちいただいた甲斐がある記事になっているといいのですが…この記事では、連載が始まってから最も要望の多かったトピックである「サブアカウント/スマーフ」について深掘りしていきます。

本記事は以前の連載記事よりも長い読み物になっていますがご了承ください。以下が要約です。

  • 今年に入って、スマーフアカウントのMMRを調整するために自動スマーフ検知システムを導入。テスト結果は成功で、スマーフアカウントが参加しているために圧倒的な差がつく対戦が大幅に減少する結果となりました。
  • さらに、5人パーティーの制限を変更することによってスマーフ活動に有意な減少が見られ、同期間中の対戦の公平性も向上する結果となりました。5人パーティーのマッチメイキングは、VALORANTにおける最も公平な対戦であり続けています。
  • この年の前半と比較すると、スマーフの数は全体として約17%減少し、新規のスマーフアカウントは「適切な」MMR帯へ従来よりも23倍速く移行されるようになっています。さらなる改良と追加機能が2023年に予定されています。

この記事は次のセクションに分割されています。

  1. サブアカウントとはなにか?なぜそれに注意を払うのか?
  2. サブアカウントを減らすために、どのような対策を取っているのか?
  3. 対策の結果は?そして将来的にどのような作業を計画しているのか?

パート1:サブアカウント/スマーフとはなにか?どうして気にしているのか?

「スマーフ」と呼ばれることもある「サブアカウント」とは、すでに他のアカウントを持っているプレイヤーがプレイしているアカウントのことを指します。

VALORANTにおいて、サブアカウントは複数の動機から作成されると考えられます。サブアカウントを作成するにあたっての根本的な動機に上手く対処できれば、ゲームにおけるサブアカウントが減少する可能性が高くなります。

この根本的な動機のいくつかは、自分とは違うランクの友達と一緒にコンペティティブの対戦を楽しみたい、というような完全に正当な動機です。一方で、私たちが阻止したい悪意ある動機の場合もあります。自分よりスキルレベルの低い対戦相手を簡単に蹴散らすためにサブアカウントを作る(「スマーフ」という用語は概してこの場合に使われます)、メインアカウントがルール違反でバンされたために新規アカウントを作る、などがその例です。

これまでのところ、サブアカウントを作成する際の最も一般的な動機は、違うランクの友達と対戦プレイを楽しみたいというものです。これは正当な動機であって、ゲーム内で実現できるようにしたいことです。しかしながら、そのために新規アカウントを作成するのは望ましくありません。ですので、複数アカウントでプレイする必要なく、友人と一緒にコンペティティブをプレイできる方法を提供すべく努力しています(詳細は後述)。

最後に、スマーフ行為の背後にある悪意ある動機のいくつかについては、サービス利用規約に明示的に反する行いと関係しており、結果としてバン対象になります。これらの行いには、複数ユーザー間でのアカウントの共有、アカウントの購入、敗北や降参によって意図的にアカウントのMMRを落とす行為などが含まれます。こういった行いは常に追跡、検知され、ゲームから排除されています。

上記がスマーフ行為の意味と、サブアカウントが作成される理由です。ではなぜ私たちはスマーフにこうも注意を払い、VALORANTから排除したいと考えているのでしょう?

  • サブアカウント/スマーフが横行すると、マッチメイキングの公平性が不安定になる可能性が高いからです。経験豊富なプレイヤーが新規アカウントでプレイすると、「適切な」MMR帯/ランクに到達するまでに時間がかかってしまいます。この間、マッチメイカーは対戦の公平性を保つのが難しくなります。皆さんが対戦に参加するときには、公平な対戦に参加していることを確信していてほしいのです。スマーフはそれを保障する仕組みを脅かすものとなります。
  • サブアカウント/スマーフはVALORANT内で悪質な言動をとる確率が高いからです。データによると、サブアカウント/スマーフと特定されたアカウントはプレイ中の行動のみならず、テキストやボイスチャットでの悪質な言動で報告の対象となる頻度が高く、ペナルティーを受ける可能性も高くなっています。これは、こういったアカウントを使うプレイヤーがサブアカウントがバンされようが「気にしない」からかもしれませんし、あるいはそもそもスマーフを行うようなプレイヤーが(メインアカウントであっても)問題行動を起こしがちなのかもしれません。
  • そしてなにより、サブアカウント/スマーフはプレイヤーの皆さんにとって気にかかるものだからです。ゲームのリリース以来何度もアンケートを実施してきましたが、コンペティティブに関する問題としてプレイヤーの皆さんから最も多く挙げられたのが、スマーフが多すぎるという問題でした。データを参照する限り、スマーフの影響は実際より大きく見積もられているようですが、それもまた取り組むべき問題のひとつです。私たちとしては、VALORANTでサブアカウントの減少に努めるだけではいけません。私たちの行っている作業や結果を示し、変化を理解していただく必要があるのです。

パート2:サブアカウントを減らすために、どのような対策を取っているのか?

私たちが対処しようとしている問題がどのようなものかがはっきりしました。次は解決策とその結果についてお話しましょう!

自動スマーフ検知システム

VALORANTのデータオペレーションチームは、プレイヤーの皆さんがもっと楽しめるゲーム作りのために、データやマシンラーニングの活用に注力しています。自動スマーフ検知システムでの第一の目標は、データを使用して出来る限り早くスマーフアカウントのMMRを適切なものにすることです。これにより、プレイヤーが不公平な対戦を強いられるケースを劇的に減らすことできます。検知システムを試験するために、チームは北アメリカでテスト(パッチ5.01)を行いました。スマーフアカウントを正確に特定し、そのMMRをメインアカウントのものに可能な限り近付けることができるか確認するためです。

スマーフを特定する方法そのものについては、検知を回避する助けになってしまうのであまり細かく説明することはできません。しかし、自動検知システムの結果についてはもちろん共有できます!

最初のテストでは、圧倒的な差がつく対戦(一方のチームが8ラウンド以上の差をつけて勝つ対戦)の比率を計りました。参考までにお伝えすると、変更を加える前はVALORANTの全試合中、スマーフの影響で圧倒的な差がついている比率は32%に及んでいました。

つまり、スマーフがいる試合では3分の1が圧倒的な結果に終わっていたのです。

この比率を「通常」の、スマーフなしでの比率に近付けるのが私たちの目標でした。ですがまず、圧倒的な差がつく確率を0%にするのは不可能だ、ということは念頭に置いてください。しばしば、スキルレベルが近いプレイヤー10人での試合で圧倒的な差がつく場合もあります。やたらに調子がよくて人生最高の試合になることもあれば、スランプになってその週で最低の試合になることもあります。または誰かのネット接続が切れて4対5の試合になるといったことも。

システムのテストのために、検知されたスマーフの50%に対してのみMMRの調整を行い、残りの50%はそのままにしておきました(対照群と呼ばれるものです)。これは、調整が実際に公平性に重大な影響を及ぼすか確認するための措置です。

北アメリカでのテスト終了時には、検知したスマーフの内MMRを調整した方の50%に関しては、圧倒的な差がつく比率が私たちの目標数値の1%以内に収まっていました。対して、調整を行わなかった方の50%(対象群)は25%の試合で圧倒的な差をつけたままでした。

Smurf_Article_Graph_1_JA.jpg

非常にポジティブな結果が出たことで、最終テストにおいては自動スマーフ検知システムの使用を他の地域にも拡張することに決定。8月中、またしても検知したスマーフの50%には調整を行い、残りの50%はそのままにしておきました。このテストを通して、ほぼ同程度の比率の改善が見られたのです。

また、このステップをさらに一歩進めて、スマーフアカウントのMMRがメインアカウントと同等になるまで何試合かかったかを調べました。データによると、調整を行ったスマーフアカウントは最短4試合ほどで適切なMMR帯に入っていましたが、調整を行わない対照群の方は10試合プレイした後も適切なMMR帯から3つもディビジョンが離れたままでした。

これらの喜ばしい結果をもって、9月には正式にスマーフ検知システムを全地域でリリースすることにしました。次のステップとして、チームはスマーフ行為が検知をくぐり抜けることがないようにする方法を探しています。試合中にスマーフを特定する手法を強化したり、検知されたスマーフに調整するMMRの量でテストを行い、より速くメインアカウントと同じMMR帯に入れる、などがその方法です。実際、チームはすでにこのアップデートに着手しています。

5人パーティーの変更

スマーフを特定して公平な試合に配置することで対処するのに加えて、そもそもサブアカウントを作成する動機を弱めるような変更を施しました。

変更のうちのひとつはパッチ3.10 (もう1年前です!)で、どのランクのプレイヤーでも5人パーティーを組めるようにしたことです(実力差が大きい5人パーティーはRRの低減が適用されます)。それ以来、対戦待ち時間、対戦の公平性、全体的に変更がどう受け取られているかなどを調査しつつ、追加の変更を加えています。

なぜこの変更によってサブアカウントが減少するのでしょうか?先に述べたように、プレイヤーがサブアカウントを作る最大の理由は友達とコンペティティブの対戦を楽しむためでした。実力差の大きい5人パーティーを組むことを可能にするというのは、スマーフアカウントを作らなくてもその動機を満たせるようにするのが狙いです。

さて、結果はどうなったでしょうか?まず、VALORANTで行われたコンペティティブの全対戦中に占める5人パーティーの割合をご覧ください。

Smurf_Article_Graph_2_JA.jpg

ご覧の通り、5人パーティーに対して変更を加えたパッチ3.10の時点で跳ね上がっていますが、それ以降はあまり変化していません。5人パーティーがコンペティティブに参加する頻度は概ね同じ数字でとどまっています。

しかし、先ほどのグラフを「通常」の5人パーティー(パッチ3.10の変更前から組むことができたパーティー)と、「実力差の大きい」5人パーティー(変更後組めるようになったパーティー)で分けてみると、以下のようになります。

Smurf_Article_Graph_3_JA.jpg

5人パーティーがコンペティティブに参加する割合にはさしたる変化はなかったものの、「実力差の大きい」5人パーティーの構成に関しては大幅な変化が見られたのです。現在組まれている5人パーティーのかなりの数が、パッチ3.10の変更以前では一緒にプレイするのが不可能だったものです。

この変更を加えた際にプレイヤーの皆さんからは、対戦の公平性に悪影響を及ぼすのではないか、という質問を受けました。幸い、データによると5人パーティーの変更によって対戦の公平性が減少したとの結果は見られません。実際は、変更を加えて以降、5人パーティーでの対戦は接戦が多くなりました。というのも、プレイヤーがスマーフアカウントを使うことが減り、メインアカウントを使うことが増えたので、マッチメイカーも公平な試合を組みやすくなったのです。現在では、3分の1以上の5人パーティーの対戦が13-10以内に収まっています。実のところ5人パーティーの対戦は、他のコンペティティブの対戦よりスコアの差が小さいのです!

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パート3:対策の結果は?そして将来的にどのような作業を計画しているのか?

数々の変更を加えて改善が見られたわけですが、VALORANTにおけるサブアカウントは実際に減ったのでしょうか?

簡潔に答えると、イエスです!

こちらはVALORANTで活動しているサブアカウントの数をパッチごとに区分したグラフです。

Smurf_Article_Graph_5_JA.jpg

全体的にサブアカウントの数は減少しており、特に先述した様々な構想を始動した段階で最も急激な変化が起きています。

しかしこれで終わりではありません!まだやるべき作業が残っており、このうちいくつかは現在進行中です。以下が残っている作業の一部です。

  • より速やかにスマーフを発見および対処できるよう、スマーフ検知の手法のさらなる改良や追加を行うこと。
  • ブースティングやアカウント共有、アカウント売買の検知および対処を引き続き行うこと。これらはライアットゲームズのサービス利用規約に反しており、この問題にはしばしばサブアカウントが関連しています。繰り返しになりますが、この種の行動を検知する方法を明かしてしまうと検知システムそのものを台無しにしてしまうため、ここであまり多く情報を共有することはできません。ですが、この件については現在調査中です。
  • スキルレベルが異なるプレイヤーが一緒にVALORANTのコンペティティブをプレイできる方法を増やすこと。つい最近、緊張感あふれるチーム制対戦システムであるPremierのAlpha版を発表しました。このシステムで、プレイヤーの皆さんがサブアカウントを作る必要性を感じることなく、友人と一緒にプレイする方法が増えることを願っています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!VALORANTにおいてサブアカウントを作る必要性を減らす試みについて、多くの情報を共有できたと思います。

スマーフ/サブアカウントは、プレイヤーの皆さんからあがってくることの多い話題のひとつです。ひとつ注意しておくべきことは、実際はその日異様なまでに調子が良かっただけのプレイヤーを、「本来ならそのランクにいるべきでない」人物だと勘違いしてしまうケースもあるということです。そのため、VALORANTにおけるサブアカウントやスマーフに対してプレイヤーが持つ不安のすべてを完全に消し去ることは不可能だと言えます。

ですが、この分野に関する改善の努力を止めるつもりは今のところありません。これまで皆さんの懸念に対処するために多くの作業を行いましたが、VALORANTでの対戦をもっと楽しく公平にするために、まだまだできることはたくさんあると考えています。いつもご意見をお寄せいただきありがとうございます。将来的にVALORANTにどのような変更を加えてほしいか、これからもぜひお聞かせください。

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